京都境町・分銅屋
モルガンおゆき邸での展示会の準備に追われているさなかのことです。そこは境町の小さな通りに面した江戸時代のなごりさえ感じる静かなたたずまい。いまの小売店とは全く違う風情がただよっていました。分銅屋というクラシックな屋号の小さなお店です。
奥には職人さんらしき方がひとり、もくもくとミシンを踏み、お店の木の戸棚には各サイズ別に鉄製の足袋の型がものものしくも、ほのぼのと積まれているのです。いわゆる活気のある、いまの華やかなお店のイメージはありません。さらに奥に目をやると「足袋仕立てコンクール金賞」の古い表彰状が目にとまりました。どこまでも静かに、世間に惑わされない姿勢。時代の流れがそこだけ止まっていたような懐かしさ。お店の品格を感じました。
  そんなお店で、この足袋と出逢ったのです。一見するとわかりませんが、普通の足袋とは違います。「足袋ヒール」を入れて履き、足をすっぽりと、きっちりと包むための足袋。背を高く見せる上げ底ヒールを入れて履いても、たぶん誰にも気がつかれないという優れものなのです。
 

そんな奥ゆかしいマニアックな足袋が足の大きさに合わせて各サイズ揃っているのも、驚きでした。これは珍しい逸品で目に留まったものですが、他にも小紋柄の足袋などもきちんと仕立てられて並んでいる足袋の専門店なのです。お店の方に訪ねると戦前から、足袋ヒールは作られていたそうです。オーダーが出来るので歌舞伎役者さんをはじめ、全国にごひいきさんがいらっしゃるのでしょうね。仕立てコンクールで賞をとられた腕は確かで、とても丁寧なつくりです。足袋づくりに誇りをもっている職人さんの姿に、京都の文化の奥の深さの断片を見た思いです。
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